2025年8月 会主催自然観察会 茶臼山高原

会主催観察会

2,350語 / 読了時間8分
注目:夏の茶臼山高原で観察出来た、色とりどりの生き物たち

日 時 :2025年8月30日(土)10:00~15:00
テーマ :テーマ:初秋の高原を観よう ~エンシュウツリフネほか~
参加者:25名(会員7名、一般18名)

 2025年度の夏の観察会は、酷暑に見舞われる平地から少しばかり遠征をして、愛知県豊根村、および長野県売木村の茶臼山高原にて、開催しました。
 駐車場は登山者でいっぱいです。連日の暑さから、近所での外出もままならないことが多く、多くの方が、涼と緑を求めて参加してくださいました。一般参加が多く、新聞での広報の力を実感します。

多くの方にお集まりいただきました!

 最初は、主担当の石黒さんから、茶臼山高原、ならびに、奥三河の地質、植生の概要を説明いただきました。最初の問いとして、「なぜこんなところに『高原』があるのか」という問いから始まりました。中央構造線が通る豊川の西側は、花崗岩質(領家変成帯とも呼ばれます)である一方で、茶臼山高原は、玄武岩質でできています。中新世(約1500万年前頃)に,地上に噴出したものが「残丘」として残っているようです。

 最初に参加者の目をひいたのは、赤い大きな果実をつけたツチアケビ(ラン科)です。光合成を行う葉を持たず、ナラタケに栄養従属しています。ツチから生えたウィンナーといったところでしょうか。

ツチアケビを発見!

 観察会前半では、サワシバ(カバノキ科)に多く出会いました。
 サワシバは、クマシデ属であり、属の名前を冠するクマシデも、池の湖畔で見ることができました。両者は、葉の様子が酷似しており、あまり気にしていないと、違いに気づかず、通り過ぎてしまいます。サワシバは、葉の基部に関して、ふちが主脈側に切れ込む形で丸っこくなり、クマシデよりも側脈の数が少ないのが特徴なのだと、図鑑や当日資料に記載がありました。しかしながら、実際の観察では、葉だけでの判別はなかなか難しく、果実の房の長短など、総合的な判断で納得がつく、という具合でした。

こちらは、「クマシデ」。実がなっています

 道を進むと、アキノギンリョウソウ(ツツジ科)がたくさん生えている場所を発見!こちらも、菌従属栄養植物です。予想以上に多くの白い花が地面から顔を出していました。

 緑色のネットで囲まれているところにやってきました。その中は、周囲の様子とまるで異なり、様々な草が繁茂しています。シカをはじめとする哺乳類による、食害の深刻さを実感させられました。さて、その草の中には、本日のお目当てである、エンシュウツリフネソウが咲き始めていました。通常のツリフネソウは、草のてっぺんで、鮮やかな赤と桃の中間色の花をつけるため、遠くからでもよく分かる、とても主張が激しい花だと、筆者は思っています。それに比べて、エンシュウツリフネソウは、ハガクレツリフネソウという和名種の変種ということもあり、葉の下で、淡い桃色の花を咲かせる様子は、とても華奢で守ってあげたくなるような姿です。

エンシュウツリフネソウ 無事に出会えました!

 その他、少し高いところに実っている「マタタビ」の果実を一生懸命とって「酸っぱい!」という声があがったり、湖畔を歩いていて、「あの黄色い花はなんだ!」と水面に咲く黄色いアサザの花に、感嘆の声が漏れたりと、大人数で賑やかに歩いた、午前の部が充実感を伴って無事に終了しました。

 午後の部では、場所を長野県売木村のアテビ平にうつして、散策をしました。
 アテビ平は、「野鳥の森」として知られています。複数の方から、「かつて、野鳥の会が宿泊で研修をしていた」と教えていただきました。夏鳥の「春の渡り」が、とても良い条件で観察できたようです。そんな場所は、今となっては特定外来生物に指定されている、「ソウシチョウ」の棲む森となりつつあります。散策途中に、何度も鳴き声を聞きました。

 歩き始めると、そこは針葉樹中心の森です。ミズゴケをはじめ、青々としたコケ類も生えています。針葉樹といえば、西三河では、スギ・ヒノキが中心となりますが、アテビ平では、クロベやサワラが主となります。ちなみに、「アテビ」という和名の植物は存在しません。ネットで検索したところ、佐渡において、「ヒノキアスナロ」(雑種)がアテビとよばれているそうです。アテビとは「当檜」と書き、「檜の代わりとなるぐらいの材料」と解釈すれば、なるほど、ヒノキそのものではないが、それ相応のものにあたる「針葉樹の森」なのだ、という事実を、名前から確認することができそうです。

ミズゴケと針葉樹の森

 今回の目玉は、セリバシオガマ(ハマウツボ科)の花です。一見すると、華奢で目立たない花です。花そのものだけでなく、複雑な切れ込みを持つ葉をもつため、株全体で見ると、より美しさを感じられると思います。シカの食害で、多くの下草がなくなる中、着実に子孫をつないでくれて、嬉しい限りです。実は、このセリバシオガマは、茶臼山の愛知県側を筆頭に、愛知県に自生はありません。(過去に記録はあったようです。)そもそも、シオガマの類は、高地に生息することが多く、茶臼山で観察できる、ということが、やや稀なことなのです。西三河では、豊田市の矢並湿地で観察できる「ミカワシオガマ」があり、なにかと注目されがちですが、このセリバシオガマも、大事に守っていきたいなと思いました。

セリバシオガマの花。美しいですね。

 最後に、アテビ平の車道を挟んで反対側に広がる、ブナ・モミの森も散策しました。アテビ平の針葉樹林とはまた違った雰囲気で、茶臼山が、谷筋・斜面の違いで、こんなにも多様な環境があるのだ、と身をもって実感した次第です。

文責:武田